一期一絵(Onceshot in Life-time)」#349 函館赤川1丁目の盆踊り会場 函館市内では珍しい、「旧盆の正調盆踊り」別名「トラディショナル・シーケンシャル・サマー・ダンス

夏の終わりのシークエンス

私が生まれ育った街では、旧盆に踊るという習慣がなかった。そのかわり、毎年8月1日になると近所の路上に櫓が出現し、函館以外では一生耳にすることもないであろうローカル極まりない曲にあわせて夜な夜な踊るという風習があった。つまりは「港まつり」なのだが、それが盆踊りなんだと長いこと信じていた。旧亀田市であるこの界隈では港祭りに踊るという習慣がない。日本古来の伝統にのっとり、旧盆になると皆いっせいに喜々粛々と櫓の周りをグルグルと踊りまくるのだが、それが日本の夏の標準仕様と知ったのも、そんなに昔の事じゃない。ともあれ、盆の踊りの歌声が止み、湯の川の街から打ち上げ花火の音が聞こえて来る頃、函館の夏の終わりはクライマックスを迎える。週明けには二学期も始まり、季節はゆっくりと秋に向かってゆくのだ、残念ながら。なお、この写真を撮ったあと、春に買ったばかりのD300の魂はどこか遠くへと旅立っていった。ニコンによると復活の儀式には一週間ほどかかるらしい。戻ってくる頃にはきっと夏も終わっていることだろう。

撮影データ

2008年8月15日 函館市赤川1丁目の盆踊り会場
NIKON D300 焦点距離15mm(35mmフィルム換算) 1/5 F4.0 ISO1000