オシフィエンチムからクラクフ方面へ780号線を30分ほど走ったところ:2012年9月27日

アウシュビッツからの帰り道にて

アウシュビッツを出る頃、雨は本降りになっていた。収容所で感じた思いが小さな棘となって心に刺さり続けたまま、鬱々とした空の下、クラクフへと車を走らせる。日本じゃ裏路地レベルの道をポーランド人は90キロ超ですっ飛ばす。雨でも、それはあまり変わらない。車線幅いっぱいの大型トラックが、対向車線を言葉どおりに掠めてゆく。運転に全神経を注げば、浮かぶ言葉もない。それでもふと脳裏をかすめるのは──冷蔵庫に残った黒パンとサラミだったりする。無事に帰ったら、それとビールで晩飯にしよう。気がつけば、アウシュビッツのことなどすっかり忘れている自分がいた。

撮影データ

2012年9月27日 プジョー208の運転席にて:オシフィエンチムからクラクフへ 780号線を30分ほど走ったところ
NIKON D300 1/500秒 F3.5 33mm(35mm換算)